消費者向け情報 / 飲食店向け情報

FAQ.真空パックのカレーやシチューはレトルトと同じじゃないの?

飲食店がテイクアウトを考えた時に思い浮かぶメニューのひとつが「カレー」「パスタソース」などの汁気の多い食品です。真空パウチに注いで密封すれば持ち帰りが容易ですし、真空パック機器自体は数万円と比較的入手しやすい。何より、オリジナリティが出しやすく家庭で作りにくいソース類は、テイクアウトに転用しやすいからです。

ところが、真空パックにも食中毒のリスクがあります。

リスクその1。レトルト食品と混同して常温に放置するお客様がいる。

レトルト食品は、加圧殺菌・加圧冷却機構が組み込まれた高圧殺菌釜(=レトルト)を用いて密封後に加圧殺菌しているため、常温での長期保存が可能です。

[レトルト製法に関するリンク]
日本缶詰びん詰レトルト食品協会|缶詰、びん詰、レトルト食品について

真空パックは密封しているだけで密封後殺菌がされていません。常温保存をすると腐敗が進み、食中毒菌がいた場合は大増殖します。

しかし、
お客様がレトルト食品と混同して真空パックを常温に放置するリスク
は高いのです。

数日前、「真空パックのカレーを買ったんだけど、あれって常温においたら膨張してきちゃった。さすがに食べなかったけど」というお客様がいました。食べなかったのは賢明です。膨張したということは食中毒菌が増殖してガスを出している状態なのです。

リスクその2。ボツリヌス菌の好む環境になりやすい。

ボツリヌス菌は毒素を発生し、生命に関わる重篤な食中毒を引き起こす菌です。
厄介なことに酸素の少ない密封された環境を好みます。
真空パックのカレーは、ボツリヌス菌の大好物な環境と言えます。(他にウェルシュ菌などもこの環境で増殖します)

ボツリヌス菌の被害について厚生省の資料から引用します。

特徴/毒素は、神経筋接合部で神経伝達物質であるアセチルコリンの放出を妨げ、 神経と筋肉の伝達を遮断して、筋肉が収縮せず、筋肉の麻痺が起こります。

症状/物が二重に見えたり、手足に力が入りにくくなるなどの神経症状が出現し、 放置すると呼吸困難などを起こして短時間で命にかかわる場合もあります

厚生省|真空パック詰食品のボツリヌス菌の食中毒対策|事業者向けリーフレット

対策その1。真空パックでカレーやソースを販売するときは

  • 120℃で4分間加熱する
    または
  • 製造から消費まで10℃以下(要冷蔵)で管理する

ボツリヌス菌は手強いところは「非常に熱に強い」ことです。ボツリヌス菌の芽胞(休眠状態になった菌)は100℃でも1分程度ではほとんど死滅しません。100℃で6時間の加熱でやっと死滅します。レトルト製法が「加圧」して沸騰温度を120℃と高めているのはこのためです。

長時間加熱したら風味が飛んでしまうので、フレッシュなカレーやソースの場合は、調理完了後に小分けにして急速冷却し、冷蔵管理。そして要冷蔵で販売します。

なお、冷蔵通販をする場合は飲食業の営業許可とは異なる許可と設備が必要ですので、ご注意ください。消費期限表示とラベルも必要です。通販で常温配送して膨張した食品が届いたというSNS等の書き込みがありましたが、非常に危険です。

対策その2。販売する時は「要冷蔵」と明記する

飲食店のテイクアウトでラベル表示を省略している場合、お客様に「要冷蔵です!」と口頭で伝えることにしていても、
うっかり伝え忘れるリスク
②お客様が家に着くまでにうっかり忘れるリスク
があります。

「要冷蔵」ラベルは、こうした重要なリスクを回避するためにあります。
大きめの字で目立つ場所に貼りつけてください。

先述の厚生省の資料と同じページに消費者向けのボツリヌス菌注意喚起のリーフレットがあります。

消費者の皆さまへ

真空パックなどの密封食品でも命に かかわる食中毒が発生することがあります。

真空パックなどの密封食品※でも常温で放置しておくと、ボツリヌス 菌が増殖し、命にかかわる食中毒の原因になることがあります。包装 の表裏の表示を確認して、適切な冷蔵保存や加熱調理をしてください。

厚生省|真空パック詰食品のボツリヌス食中毒対策|消費者向けリーフレット

対策その3。購入後は冷蔵庫で保管し、充分に再加熱してから食べる。

お客様には「冷蔵庫で保管し、充分に再加熱してから召し上がりください」の旨をお伝えしてください。ボツリヌス菌の出す毒素が食中毒を引き起こしますがこの毒素が存在していても80℃30分間(100℃なら数分以上)の加熱で失活します。「充分に再加熱」とは80℃で30分以上、鍋をよくかき混ぜて、グツグツと煮るまで再加熱をします。

ただし毒素が大量に発生して容器が膨満している状態のものは、召し上がらないでください。

お客様は意外なほど食品の取り扱いをご存知ありません。
真空パックはレトルトと同じように思い、お弁当はコンビニ弁当と同じだけ消費期限があると思うのが、(正しいかどうかは別として)現代のお客様の”常識”です。
お客様は不特定多数で知識もさまざまですから、飲食店はその前提に立って製造しないとリスクが高いのです。厚生省はじめとする官公庁、メーカーさん、団体などのウェブサイトではきちんと広報をしていますし、当サイトに書いてもお客様全員にまで情報が届くわけじゃありません。お客様に食べかたとリスクを直接伝えてお客様を守れるのは、飲食店の皆さんだけです。

投稿者

info@anemosu.co.jp